頚動脈ステント治療頚動脈ステント治療

頚動脈狭窄症とは?

頚動脈狭窄とは、脳に血液を送る最も大切な首の血管(頚動脈)が動脈硬化を生じ、血管の内側におかゆ(アテローム)状のかたまり(プラーク)がこびりついて細くなる病気です。
血管が狭くなるほど血栓ができやすくなり、プラークや血栓が流れて脳梗塞を起こす危険性が高くなります。高血圧、高脂血症、糖尿病などをもった中高年の男性に多いのが特徴です。
現在のわが国の欧米化した社会生活を考えると、この疾患はますます増加することが予測され今後注目される疾患の一つだと思われます。

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どんな症状?

超音波検査の写真

手足の麻痺や言語障害等の症状が突然生じ、24時間以内に回復する「一過性脳虚血発作(TIA)」、神経症状が続き後遺症を残してしまう「脳梗塞」、一時的に片方の目が黒いカーテンの幕を引くように見えなくなる「黒内障」などがあります。

TIAは、何度も繰り返す間に脳梗塞を発症してしまうことが多いため、直ちに精密検査をすることが必要です。また無症状であっても、狭窄の度合いが強いと、脳梗塞を発症する危険性が高いことが知られています。

また、これらの症状が全くなく、諸検査で偶然見つかった場合は、無症候性頸動脈狭窄と言います。狭窄の程度が強くなると、脳梗塞を予防するために治療が必要となります。

どんな検査をするの?

頚部MRAの写真

頚動脈狭窄の診断法として、一番負担の少ない検査は超音波検査です。(写真上)この検査は、頸部の皮膚から頸動脈に超音波をあてて、血管壁や血流の状態を評価することが可能な検査です。
血管壁の動脈硬化性変化の程度や、プラーク、血栓形成、潰瘍形成などが観察されます。さらに頸動脈を流れる血液の速度や量を測定することもできます。
さらに詳しく調べるためには、MRA検査(写真下)、CT検査、脳血流シンチ(SPECT)、脳血管撮影検査などがあります。

どんな治療をするの?

軽い病変なら高脂血症薬や抗血小板薬の投与などで内科的治療をおこないます。
また、悪化していないことを確認するために、定期的な超音波検査などをする必要があります。血管が半分以上細くなっていて、片目が見えにくい、片方の手足がしびれているなどといった脳梗塞の症状が認められる場合、入院治療をおこないます。
さらに、脳梗塞の症状がない無症候性でも、頸動脈が80%以上詰まっている場合は、入院治療を検討します。治療方法は動脈硬化を起こした血管内膜を全身麻酔下で取り除く手術療法(頸動脈内膜剥離術CEA:Carotid Endarterectomy)と、切らずに治す血管内治療(頚動脈ステント留置術CAS:Carotid Artery Stenting)がありますが、どちらの治療法も一長一短があります。
現在のところ、頸部頸動脈狭窄症に対する標準的外科治療法はCEAとされています。しかし、頸動脈ステント留置の技術の向上とステント関連器材の発達により頸動脈ステントの数は増加傾向です。当科では、病客さまの病状にあわせ適切な方法を選択し、CEAが必要と思われる方には専門医療機関へ紹介、ステント治療が最適と思われる方には当院でステント留置術を行っています。

頸動脈ステントとは?

局所麻酔下に、足の付け根の血管(大腿動脈)からカテーテルを通して、血管の中から狭窄部位を広げる治療です。
頚動脈の狭窄部分に"ステント"と呼ばれる金属性の網状の筒を留置して、血管を拡張させ、プラークを壁に押しつけ安定させる方法です。

血管を拡張させる時に、コレステロールの破片や血栓が脳内に流れて行くと脳梗塞を生じてしまいますので、その予防のために小さな特殊な網(フィルター)をあらかじめ狭窄部位の先に進めておいて、治療中に血流を止めることなく、コレステロールの破片や血栓だけを回収して、脳梗塞を防ぎます。

治療時間は通常2時間程度です。この治療は、内膜剥離術と比較して体の負担が少なく、高齢者やいろいろな合併症を持った方にも行うことができます。術後の安静期間や入院期間も短いのが特徴です。

  • ステント留置前
  • ステント留置後

使用するステント

  • 頸動脈用プリサイスは、ニチノール(ニッケルとチタンの合金)でできた自己拡張型ステントです。
  • 網の目状のデザインに、「Peak to Valley Design」と呼ばれるセグメント構造を採用し、屈曲病変に対しても滑らかな内腔を保持します。

  • アンジオガードXPは、CA施行時に、血流を確保しつつ、血栓やプラークなどの塞栓物質の脳への流入を防ぐ傘型のフィルター付きプロテクションデバイスです。
  • ポリウレタン製のフィルターの表面に、レーザーカットであけた100マイクロメートルのポア(孔)により、手術中でも血液の流れを保持します。

頸動脈ステント留置術の危険性は?

本治療の問題点は、たとえアンジオガードフィルターを使用していても血管拡張時にコレステロールの破片や血栓が脳内に流れていって脳梗塞を生じる危険性を完全にゼロにはできないことです。この場合、半身麻痺や言語障害などの後遺症を残すこともあります。
また発生率は低いですが、血管拡張後に脳内への血流量が多くなりすぎて、脳出血を起こすこともあります。

心臓病センター榊原病院では、脳梗塞予防の治療として頚動脈ステント留置術を行っていますが、実際に脳梗塞を発症された急性期の病客さまへはすみやかに脳神経外科専門医への紹介、転送を行っています。ご心配なときはお気軽にご相談ください。

頚動脈ステント留置術(CAS)を行える施設、医師の基準は?

この治療法は新しいものであり、すべての頚動脈狭窄症の方に行うことのできる治療ではありません。
本邦では、平成20年4月に厚生労働省によって保険適応となりました。「将来の脳梗塞を未然に防ごう」という治療ですから、安全性に問題があるようでは治療として成立しません。

そのため、この治療を保険適応として承認する際、厳しい実施基準が定められました。頸動脈狭窄症の方は心筋梗塞や狭心症を合併している方が多いので、循環器内科医と脳卒中専門医の連携がとりやすく、設備の充実した施設に限られています。

当院でも脳神経外科専門医と常時連携をとりながら治療に当たっています。また、「CAS実施医」「CAS指導医」という制度も設けられ、この制度によって、頸動脈撮影の経験と所定の研修コースを修了した医師にのみ、治療の資格が与えられています。

医師の治療レベルを一定以上に保ち、治療成績を維持するのがこの制度の狙いです。
当院では循環器内科副院長 山本桂三がCAS指導医となっています。

なぜ、心臓病センターで頸動脈狭窄症の治療を行うの?

【理由1】頸動脈狭窄症は、心臓病を含めた「全身血管病」の一つにすぎない!

日本の上位三大死因は、がん、心筋梗塞、脳卒中ですが、このうち心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞)は、動脈硬化が主な原因です。
近年の食生活の欧米化や運動不足、肥満に加えて、糖尿病、高脂血症などが重なると、動脈硬化が生じます。動脈は全身のいたるところにありますので、動脈硬化も脳や心臓の血管だけでなく全身で進行します。

首の血管(頸動脈)は動脈硬化を早期に生じやすい部位であり、頸動脈が細くなると脳梗塞の原因になります。おなかや足の血管が詰まると歩行障害を引き起こし、重症例では壊疽や感染症を合併して下肢切断に至ることもあります。ひどく足の血流が落ちた方は、乳癌や大腸癌の方よりも短命であるとされています。

また、腎臓の動脈が細くなったために、高血圧がなかなか治らない、という方もたくさんおられます。こういった全身血管の病気は「閉塞性動脈硬化症」と呼ばれますが、その約8割は自覚症状がありません。また、75歳以上の方の約2割に閉塞性動脈硬化症があり、心臓病の方の約4割に合併するとされています。

「心臓を治療してもらったから安心」「脳外科の先生に見てもらっているから大丈夫」と思いがちですが、日本の病院ではまだまだ全身動脈硬化の総合的なチェックや治療がなされていないのが現状です。

【理由2】頸動脈狭窄症は心臓病の人に多い!

狭心症や心筋梗塞などの心臓病を起こした方は、そうでない方に比べて頚動脈狭窄症を多く合併しており、脳卒中を約3倍発症しやすいことが知られています。

心臓だけを治療しても長生きできず、脳卒中など、他の病気でお亡くなりになる方が増えています。
当院では動脈硬化を「全身血管病(Endovascular disease)」と考え、心臓のみならず頚動脈、鎖骨下動脈、腎動脈、下肢動脈などすべての血管を総合的に加療(Total Vascular Careと呼びます)しています。

ふらつきや手のしびれ、麻痺、意識消失などの症状があれば当然脳神経外科を受診されるはずですが、こういった症状のない無症候性頸動脈狭窄症の方は脳神経外科を受診しないため、心臓病センターで動脈硬化の全身検査をして偶然発見されることが非常に多いのです。
当院ではこういった無症状の頸動脈狭窄症を早期に発見し、適切な治療を行うことで脳梗塞も未然に防ぎ、みなさんに健康で長生きをしていただきたいと願っています。

【理由3】頸動脈狭窄症のステント治療は循環器専門医の得意分野!

米国では日本に比べて年間約7倍もの頚動脈ステント留置術がなされていますが、実施医の約6割が「循環器内科医」です。
残りの4割を血管外科医、放射線科医などが占め、脳神経外科医は非常に少ないのです。

彼らに理由を聞くと、「首は脳じゃないから」と答えるそうですが、実は頚動脈ステント留置術を行うときには、徐脈、低血圧その他の循環器系の状態変化がほぼ必発であり、それらの管理を適切に行うには「餅は餅屋」のたとえ通り、循環器専門医が適しているとも言えるのです。

また、ステント器具一式は日常診療で循環器内科医が使用している心臓用の器具とほぼ同一であり、「器具の扱いに慣れている」のも循環器内科医であると言えます。

【理由4】ステントを置いて一安心、でも、その後も「内科的」治療を!

頚動脈ステント留置術が無事終了、ほっとしますがその後も血圧、脂質、血糖などの危険因子を管理し、病客さまに元気で長生きしていただくために食事療法、運動療法、薬物療法などの長期的な全身管理を行っていく必要があります。

頚動脈ステントで予防できる脳梗塞は、全脳卒中の約4割であり()、万能の治療ではありません。病客さまとの二人三脚のこまやかな日常診療は外科の先生方よりも循環器内科の医師に向いていると言えます。

心臓病センター榊原病院では、脳梗塞予防の治療として頚動脈ステント留置術を行っていますが、実際に脳梗塞を発症された急性期の病客さまへはすみやかに脳神経外科専門医への紹介、転送を行っています。ご心配なときはお気軽にご相談ください。
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